中国に「メディア王」は誕生するか?

執筆者:畑実生2003年7月号

 北京の民間企業、星美伝媒(ステラー・メガメディア)が、香港上場のメディアや娯楽産業に対する買収攻勢を強めている。企業の経営者は、三十五歳の実業家・覃輝氏。最近では、香港最大の映画制作・配給会社、ゴールデン・ハーベストの経営権獲得を画策していることも発覚し、証券市場を驚かせている。 覃氏が狙うのは、ゴールデン・ハーベストの会長で、「香港の映画王」として知られた鄒文懐氏が握る三一・三%の株式。ゴールデン・ハーベスト社は、「複数の第三者と株式売却の交渉を開始しているが、会長保有株を売却する可能性はない」とコメントしている。 だが、業界関係者によると、今年七十六歳と高齢の鄒氏は久しく映画制作から遠ざかっており、持ち株減らしを望んでいるという。その上、映画離れが深刻な香港にあり、同社の業績は低迷続き。SARS(重症急性呼吸器症候群)の流行で一層の収益悪化が必至となれば、株式売却は現実味を帯びてくる。 市場の注目を一気に集めた覃氏だが、その人物像は明らかになっていない。中国紙によれば、二〇〇一年に設立した星美伝媒は、テレビドラマの制作や映画館のチェーン経営などを通じて、三年間で中国最大クラスのメディア企業に成長を遂げている。広告収入も潤沢だという。覃氏は、中国共産党で大きな影響力を持つ長老だった故・李先念氏と深い関係にあったとも伝えられている。

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