台湾で来年三月に行なわれる総統選には、現職の陳水扁総統(民進党主席)に、最大野党・国民党の連戦主席と第二野党、親民党の宋楚瑜主席が正副総統候補として挑むことが確定しているが、最近、連、宋両氏が「密約」を結んだとする説が浮上、地元マスコミの報道が過熱している。 両党周辺から漏れる密約の中身は三項目からなり、「当選後、副総統が行政院長(首相)を兼任」「近い将来、国民党と親民党が合併」するというのが二本柱。三本目の柱は「総統候補は来年選挙が連氏、二〇〇八年選挙は宋氏でいく」というものだ。 前回総統選(二〇〇〇年三月)では、国民党を飛び出し、無所属で出馬した宋氏が連氏に大差をつけて次点となった。宋氏は次期総統選でも総統候補として出馬したい意向だったが、国民党秘書長時代の金銭スキャンダルを連氏らに握られたうえ、親民党の資金繰りが苦しいこともあって妥協したと言われる。 親民党サイドには、台湾の田中角栄といわれ、剛腕で知られる宋氏が、大衆的人気に欠け、指導力も未知数な連氏の風下に立つことには納得できないという空気が根強い。密約説はそんな不満を和らげる効果を狙って流されたとする見方が有力だ。 実のところ、台湾の副総統は儀礼行事などのほかは何の権限もない「お飾りポスト」。だが、総統が急死した場合は話が別だ。憲法では副総統が「任を継ぐ」と定められている。李登輝前総統も蒋経国氏の死去で昇格した。「宋氏はそれを計算に入れて連氏と組んだ」。宋氏支持者からはそんな物騒な話も伝わってくる。

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