田中均外務審議官(政務担当、1969年入省)とともに対北朝鮮秘密外交を担った平松賢司北東アジア課長(78年)が、就任二年を過ぎて在外勤務に転出することが確実になった。七月一日付けでハーバード大学客員研究員として赴任するようだ。 平松は交代を告げられた際、「ミスターYとの交渉はどうなる」と反発、ポスト継続を直訴したという。ミスターYは平松の交渉相手で、北朝鮮外務省日本部の幹部とみられている。平松は田中とのコンビで北朝鮮外交を動かすことを狙っていただけに、ショックを受けたようだ。異動先についても、在ワシントン米大使館公使という当初の話が流れたのは、米国側が難色を示したためとの説がある。 田中のカウンターパート、ミスターXも、「北朝鮮国防委員会の事務局次長」(産経新聞)と正体がバレつつある。北朝鮮側は不信感を高めているようで、政界の田中バッシングと併せ、対北裏ルートの存続は困難になりつつある。対北宥和派の田中・平松の交渉術も次第に明らかになっている。彼らは北朝鮮側に「日本外交を動かしているのは政治家ではなく、われわれ官僚だ」と豪語していたらしい。 ミスターXとミスターYの正体を知るのは、小泉首相、福田官房長官、竹内行夫外務事務次官(67年)など一握り。担当の薮中三十二アジア大洋州局長(69年)らにもその正体や交渉経緯を報告していない。このため、薮中は対北強硬派の安倍晋三官房副長官への傾斜を強めているという。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。