「産業再生バブル」を生んだ旧大蔵省の手口

執筆者:末羅征幸2003年8月号

「六月にも」と言われていた産業再生機構の一号案件がいまだに決まらない。それもそのはず、企業再生ビジネスが「ブーム」となって、不良債権の値付けが進まないという奇妙な「バブル」が生じているからだ。「閻魔大王のプロポーズを断ったからだ」。六月に金融庁から営業停止処分を受けた大和証券SMBC。最近になって、「大和SMBCの清田瞭社長が産業再生機構の社長就任要請を断ったから、政府が意趣返しに出た」という陰謀説がまことしやかに広がっている。なぜなら処分理由が、昨年暮れに発覚した社員のインサイダー取引に関連して、「違法取引をした社員を昇格させた人事制度の不備」という後講釈に過ぎず、停止期間も一日限りという不自然さだったからだ。「行政処分をちらつかせて、金融庁が東京海上火災保険に朝日生命保険との合併とりやめの撤回を迫った構図に似ている」(銀行関係者)という。 再生機構の社長候補に清田氏が浮上し、内閣府や谷垣禎一担当相が説得に乗り出した二月上旬。ほぼ同時に、金融庁は事件の事実説明と業務改善報告を求めた書類を高木祥吉長官名で大和SMBCに送りつけている。通常、個人の犯罪だけでは会社の責任を問えないし、刑事事件は検察主導で行政の出る幕ではないはずなのに、だ。

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