米国の防衛産業最大手、ロッキード・マーチン社が恐れていることがある。それは「米政府が欧州の企業を政府の購入契約から締め出すことで、自社が巨大な欧州市場を失う事態」(米防衛関係者)だ。 米議会は来年の防衛関係の契約に向けて「バイ・アメリカン」法を強化、購入品の米国での組立て比率を現行の五〇%から六五%に引き上げる法案を準備している。背景には、親米のアラブ首長国連邦がこの六月、欧州の旅客機、エアバスの購入を決めたショックが尾を引いているようだ。航空・防衛大手のボーイング社が販売競争に敗れた事態を受けて、「せめて国防総省だけでも米企業を優先したい」(航空メーカー筋)という思惑が働いているという。 ただ、新法案は、戦闘機からレーダーまでハイテク兵器を一手に引き受け、欧州市場での売上げが「米国防総省への納入の六倍規模」(同)を誇るロッキード・マーチン社にとってはありがた迷惑なのだ。英国と共同開発中のJSF機をはじめ数々の国際プロジェクトを主導している立場から、なおさら欧州市場が米企業を締め出す報復を懸念している。

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