六月中旬にロシアを訪問した自民党の森喜朗前首相が、北朝鮮に残る拉致被害者の家族の帰国に向けた工作をプーチン大統領に要請するという「特命」を受けていた可能性がある。 複数の官邸筋によると、小泉純一郎首相は九月の自民党総裁選と秋に予想される衆院解散・総選挙での「勝利」に向けて、対北朝鮮外交で大きな得点を挙げることを画策。北朝鮮に独自のパイプのある中川秀直前官房長官を側近とする森氏が、北朝鮮に影響力をもつロシアを訪れ、キム・ヘギョンさんら複数の拉致被害者の家族の帰国についてプーチン大統領から金正日総書記に“圧力”をかけてもらうよう依頼する案が極秘裏に練られ、実行されたようだという。「多額の官房機密費が『工作資金』としてロシア側に渡された可能性がある」(自民党関係者)との見方がもっぱらだ。「拉致」を政局に利用している観のある官邸の手法には官邸内でも安倍晋三官房副長官らが強く抵抗している。これと、田中均外務審議官と安倍氏の確執をからめ、「安倍氏の総裁選後の内閣改造での“更迭”が決定的になった」と噂を流す自民党幹部もいる。

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