インドが国家的威信をかけて開発している統合誘導ミサイル開発(IGMD)計画に重大な支障が生じ、計画の全面的見直しが必至となったとの情報がある。 ニューデリーの軍事筋によれば、同計画を担当しているインド国防省幹部は六月半ば、緊急会合を開き、IGMDの柱であるミサイル五機種のうち、短距離地対空ミサイル「トリシュル」の開発断念を決めた。誘導システムが十分機能せず、命中精度が極めて低いことが判明したためという。 この決定は宿敵パキスタンとの軍事バランスへの影響を懸念するインド最高首脳によって最高国家機密とされ、パキスタン側の目をあざむくため、インド当局は六月下旬にわざわざ東部オリッサの実験場でトリシュルの「発射実験」を行ない、「成功した」と発表したと、同筋は指摘している。 ロンドンの軍事専門家の間では元来、IGMDのうち順調に開発が進んでいるのは「アグニ」と「プリトビ」の二機種だけとの見方が有力だった。インド軍部は、トリシュル開発の断念によってミサイルの開発・配備計画の根幹が揺らぎ始めたという危機感を強く抱いているようだ。

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