楽しいはずの休暇にも、企業から見ると別の側面がある。社員の“不正”をチェックするには、絶好の機会となるからだ。あなたがいない間に会社では何が行なわれているのか――。「昇格したら、年内に連続二週間の休暇を取るよう上司から言われました。これまでも休日出勤した分の代休消化さえ難しかった。仕事も責任も増えるのに、営業日で十日続けて休めますかね……」 在京の外資系証券会社に勤務するトレーダーは思案顔だ。家族のこと、自分の健康のことを考えれば二週間の連続休暇は確かに魅力的。だが、上司の言葉を思い出すと、夢は覚めるという。「会社からの連絡は受けられるようにしておいてほしいが、休暇中はオフィスや取引先には一切連絡をしないこと。休んでもらっている間に、君のチームの担当業務に関して内部監査が入るかもしれないから、そのつもりで」 社員に長期休暇を取らせ、その留守に内部監査を行なう――人間性善説に依って立つ日本型の組織運営においては、やりすぎとさえ思えるような手法なのだが、一方、性悪説を基盤とすると言われる欧米型の組織においては、目新しいものではない。巨額の資金がからんだ不正が起きやすい金融企業だけでなく、石油メジャーのエクソンなど事業会社でも以前から採用されている。

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