人材戦略の軸となる大卒の就職難は深刻

執筆者:遊川和郎2003年8月号

 一日も早いSARS制圧に追われていた五月下旬、胡錦濤総書記は中国共産党中央政治局会議を主宰し人材戦略の強化策を話し合った。会議で確認されたのは「人材強国戦略」、そして「党が人材を管理する」という基本方針である。人材戦略とは、党・行政、企業経営、社会の各分野で必要とされる専門人材の育成、適正配置、効果の最大化を制度的に行ない、育成した人材を党の管理下に置くことである。こうした戦略を打ち出した背景には、WTO加盟後のグローバル化の中で、「ヒト、モノ、カネ」のうちヒトの流出、人材不足が中国の持続的な成長を最も制約する要因として認識されていることがある。 党と政府は昨年五月、「二〇〇二―〇五年全国人材集団建設計画綱要」を策定。数値目標として中等専業学校卒業相当以上の人材を二〇〇〇年の六千三百六十万人から二〇〇五年には八千三百五十万人以上(人口の約六・三%)に、人口十万人中、大卒以上の学歴保有者を三千七百人以上とするとした。 人材育成とともに強調されているのが人材の配置だ。カギとなるのは、大都市への人材の過度の集中を是正し、西部地区、中小都市への人材の流れを促すことである。昨年三月、「西部地区人材開発十年計画」を策定、物価水準とハードシップ(生活条件)を考慮した賃金体系の整備といったインセンティブも検討されている。同六月には党の組織・人事を動かす中央組織部内に「中央西部地区人材開発協調小組」を設置、中央と西部地区が共同で人材開発に取り組んでいる。

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