台湾の陳水扁総統は、来年三月の総統選挙と同時もしくはそれ以前に、原発建設の存廃やWHO(世界保健機関)加盟を問う住民投票を実施すると宣言した。支持率低迷に苦しむ陳総統が住民投票に乗じて総統再選を目論んでいるとの分析が支配的。与党・民進党筋は、中国が「統一・独立問題を問うもの」と住民投票に反対すれば、反発した台湾世論が陳水扁支持に向かうと算盤を弾く。 一方、中国は今回も住民投票への反対を表明。だが、そのトーンは従来に比べて格段に弱く、むしろ米国を通じて台北を牽制する姿勢が目立つ。米国は台湾外相らをワシントンに呼び、陳総統の真意を質した。その上で国務省は、「台湾が住民投票を急ぐ必然性は見られず、米国も積極的に支持しない。陳総統が細心の注意を払うものと確信している」と釘を刺した。北朝鮮の核問題があるだけに、米国は中国の意向をある程度尊重せざるを得ないのが、東アジアの現在の国際政治環境だ。 中国側が「原発問題での住民投票は勝手だが、WHO加盟や主権問題での投票は許さない」と米国に伝えていることから、落としどころは原発問題の投票のみという観測も広まっている。

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