ロシア大統領の訪英で供されたワイン

執筆者:西川恵2003年9月号

 イラクや北朝鮮のニュースの陰でほとんど注目されなかったが、六月末のプーチン・ロシア大統領の英国訪問は歴史的な意味合いを含んだイベントだった。 プーチン大統領は六月二十四日から二十七日まで国賓として英国を訪問した。英国がロシアの元首を国賓として受け入れたのは一八七四年のアレクサンドル二世以来で、実に百二十九年ぶりだった。 ロシア革命後の一九一八年、英王室の親戚にあたるロシア皇帝ニコライ二世と家族が処刑され、英国は以来、ソ連と外交慣例の国賓訪問を絶った。和解が成立したのはソ連崩壊後の九四年、エリツィン大統領のときで、エリザベス女王が初めて国賓として訪露した。 プーチン大統領の国賓訪問に、英国は外交儀礼に則って手厚く遇した。近衛兵による二十一発の礼砲。エリザベス女王とプーチン大統領が乗る一九〇二年製造の六頭立て馬車を先頭に、馬車列のパレードによるバッキンガム宮殿入り。ウェストミンスター寺院にある無名戦士の墓での献花式。そしてその夜、約百五十人が参加して歓迎晩餐会が開かれた。 〈料理〉 トゥールのポタージュ、トリュフ風味で 水煮したサーモン、ムスリーヌ・ソースで 雛鳥のポワレ、シャンパーニュ風味

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