今年六月、スイスで開かれた第三十七回技能五輪国際大会。「精密機器組立て」部門は、伴祐一君という二十二歳の若者が金メダルに輝いた。「またデンソーか」という声が会場で聞かれたのも無理はない。伴君の優勝は、彼の勤める総合自動車部品メーカー『デンソー』(本社・愛知県刈谷市)にとって、この部門での六連覇となったからだ。 二年に一度の国際大会で連覇を果たすのは容易なことではない。まず、前年に行なわれる日本の国内大会で優勝しなければならないからだ。さらに、国際大会では韓国や台湾などのアジア勢、ドイツやスイスなど欧州の“技能先進国”からの代表選手(各国一名)との競争に勝ち抜く必要がある。同一企業出身選手の六連覇は、史上稀な出来事だった。「またデンソーか」と驚かれた理由はそれだけではない。伴君も含めデンソーの選手は金3、銀1、銅1と、出場した全選手がメダルを獲得、日本チームの全獲得メダル(金6、銀2、銅4)のほぼ半数を一社で支える結果となったからでもある。 技能五輪では、機械組立てや抜き型、機械製図(CAD)、旋盤といった製造業に関係の深い職種から、石工や左官、建築大工、洋裁など、いわゆる職人的な職種まで約四十種目が争われるが、一時は優位を誇った日本も、一九七一年を最後にトップの座を譲り続けてきている。前回のソウル大会では韓国の金メダル20個に対し日本は4個。日本における「モノづくり」の地盤沈下のひとつの象徴とも見られてきた。

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