中国「軍改革」の本当の狙い

執筆者:藤田洋毅2003年10月号

「二十万人削減」が報じられたが、兵員数だけを減らそうとしているのではない。焦点は組織序列の簡素化だが……。「核心は“精”の一文字である」――中国人民解放軍の機関紙「解放軍報」(九月二日付)評論員論文はこう表現した。その前日、江沢民・党中央軍事委員会主席が二〇〇五年までに兵力を二十万人削減すると宣言したのを受け、精鋭化・簡素化を意味する“精”をキーワードに据えたのである。 情報化を軸とする「新軍事変革」を進めるため、江は軍改革に大なたを振るおうとしている。一九八〇年代の百万人、九〇年代末の五十万人に比べ削減規模は小さいが、「軍事的な意義は、ずっと大きい。重要な一歩です」と北京の消息筋は明言した。総兵力は今回の削減で二百五十万から二百三十万となる。 改革の狙いは、機動力や即応能力を損なう複雑な序列・階層を簡素にし、官僚的な縦割り構造を壊すことだ。九一年の湾岸戦争や先のアフガン攻撃、イラク戦争を通じ中国は、装備・武器の機械化で大きく遅れをとっているばかりか、IT(情報技術)を駆使した情報化では米軍の足元にも及ばないことを思い知らされた。「わが軍は戦闘が終わったころに戦場に到着するしかない」と、ある軍幹部は自嘲する。簡素化の重点は、海軍・空軍の指揮命令系統に置かれている。

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