日本とほぼ同じ面積を持つ世界最大の湖、カスピ海とその周辺地域で、ロシアが軍事力を強化している。 カスピ海沿岸のアストラハンに近い空軍基地には戦闘爆撃機Su24部隊二連隊が追加派遣され、やはりカスピ海から遠くないサラトフの近郊にも戦略爆撃機Tu160ブラックジャックが展開するようになった。 カスピ海艦隊には昨夏、巡航ミサイルの搭載が可能な最新鋭巡洋艦が導入され、今後さらに同型艦二隻の追加投入が見込まれている。キロ級ディーゼル潜水艦が二隻、バルチック艦隊から配転されるとの情報もある。カスピ海艦隊はいまや露海軍で唯一、新造艦が投入される艦隊とまで言われる。 プーチン政権がこの局地的軍拡の念頭に置いているのは石油資源や大統領選挙が行なわれたチェチェン、やはり十月に大統領選があるアゼルバイジャンだ。だが、今回の示威の対象には近隣のトルクメニスタンやカザフスタン、そしてイランまでもが含まれると考えた方がいい。 カスピ海周辺地域に対する米国やその他の西側各国の軍事展開能力は相対的に低く、地域の安定を担うのは引き続きロシア――プーチン政権の狙いは明確だ。

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