九月末、陳水扁総統は先の台湾の主権を問う住民投票構想に引き続き、二〇〇六年を目途に新憲法制定を目指すと言明した。一連の発言は、再選を目論みながら支持率低迷にあえぐ陳総統が、北京をほどよく怒らせて台湾側の反中感情を煽ることが目的との見方が支配的だ。来年三月に総統選があるが、これまでの総統選では北京側が最も嫌う候補が勝利している。 ところが今回、北京側は陳水扁の発言に対して「選挙後に対応する」という冷静な反応に終始し、陳総統の狙いは外れた形だ。北京の対台湾部門はこの変化について「台湾情報を担当する香港駐在は、以前は台湾独立派を罵るのみだったが、胡錦涛体制になり人事が刷新されて、報告内容もフラットになった」と指摘。台北も「胡錦涛が共産党中央統一戦線工作部の人脈で台湾工作部門へのテコ入れを図ったようだ」と北京側の動きを確認している。 台湾が後ろ盾とたのむ米国は、北朝鮮への対応で中国との協調を図っており、その点でも中国には余裕がある。陳総統の思惑外れはまだまだ続きそうだ。

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