「科研費バブル」――その先に見える未来

執筆者:船木春仁2003年11月号

一九九六年、科学技術基本計画。すべてはここから始まった。新たな産業競争力創造という美名の下、研究現場は年間数兆円をのみ込む。果して日本再生の“技術”は生まれるのか、それとも泡と消えるのか。 二〇〇二年四月、一般人はアクセスすることのできないデータベースが内閣府で稼働を始めた。「政府研究開発データベース」。〇一年度からスタートした「第二期科学技術基本計画」の隠れた目玉事業の一つだ。これまで登録された研究者の数は約十九万人。研究機関や研究者名を入力すると採択されたテーマや研究費の配分額、特許、論文タイトルなどが一目で分かり、ランキング設定もできる。 データベースの構築は、研究計画の効率的な把握と公募型研究費を配分する際に重複申請をなくし、特定の機関や研究者に助成が集中しないようにするためだ。データベースを急いで用意しなければならないほど、大量の金が現在研究機関、特に大学に流れ込んでいる。それを「科研費(科学研究費)バブル」と言う。 昨年十二月の総合科学技術会議「競争的資金制度改革プロジェクト」の配布資料として提出された「二〇〇一年度分解析データ」は、各省庁の公募型研究費に採択された研究者を名寄せして総採択件数や配分額を弾き出している。それによると、最も採択件数が多かった研究者は十三件で、配分総額は約五五〇〇万円。配分総額が三億六二〇〇万円で最も多かった研究者の採択件数は八件。採択件数上位二十位には配分総額が一億円を超える研究者が十一人いる。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。