愛校心が支える電気通信大の成功

執筆者:白石新2003年11月号

研究成果を売り、さらなる研究費に充てるTLO。だが目論見通りの成果を上げるものは少ない。独自のスタンスで成功した電通大TLOの経営の秘密に迫る。 TLO(Technology Licensing Organization・技術移転機関)、特許本部事業に共同研究と、産学連携の各分野で独特のスタンスを保ちつつ実績をあげている国立大学がある。東京・調布市にある電気通信大学(以下電通大)である。 そもそもTLOとは、大学の研究成果を特許化し企業に技術移転する機関である。しかし、国内TLOは決して成功例ばかりではない。東大系のCASTIや東京農工大TLOなど、黒字のTLOは三十を超えるTLOの中で数えるほどしかない。数少ない成功例の一つである電通大のTLO、キャンパスクリエイトも初年度より黒字をあげ、今年、設立後初めて補助金抜きで配当することができた。設立から四年。これは快挙といってもいい。一体どこにその成功の秘密があるのだろうか。 電通大の梶谷誠学長は言う。「産学連携と声高に言われるようになったのは日本ではごく最近ですよね。しかし、本来は少なくとも理工系の学部での研究の成果はそのまま産業界で活かされることを予定していたはずです。ところが、日本ではいつのまにか、企業向けの人材が育てばそれでいいというような風潮になっていた。それが今、もう一度本来の姿に戻りつつあるということではないでしょうか」

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