中国の国有商業銀行の香港部門で、香港の発券銀行の一つでもある中国銀行(香港)の株価が急騰している。昨年の香港上場以降、株価はほぼ一貫して公開価格の八・五香港ドル(一香港ドル=約十四円)を下回っていたが、七月下旬から上昇し始め、十月初旬には十三香港ドルにあと一歩まで迫った。異様な上げの謎を解くカギは、にわかに浮上した香港の人民元オフショア市場化構想にある。 七月二十五日、北京から戻った香港の董建華行政長官は中国政府がオフショア市場を創設する際に香港を優先することを約束、香港の銀行に預金、送金、為替、クレジットカードにおける人民元業務を解禁することで同意したと語った。業務は個人向けに限定、貸し出しは認めないという本格的なオフショア市場にはほど遠い内容だが、限定的でも人民元業務が始まれば決済銀行が必要。その資格があるのは中銀香港しかないとの思惑で株が買い上げられたのだ。同行は既に決済銀行のための準備を始めたといわれる。 人民元は国外持ち出しに厳しい制限があるが、香港では五百億―七百億元(一元=約十三円)が流通しているとされる。中国政府の規制緩和で本土からの旅行者が激増しており、香港に流れ込む人民元がさらに増えるのは確実。これを預金として吸い上げ管理下に置くことは中国にとってもメリットが大きい。一方、香港の銀行には手数料収入が期待できる。

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