[シリコンバレー発]エンロン事件以降、米経済界を二分する論争の種になっている従業員向けストックオプション(SO、自社株購入権)。企業会計上、SO発行の推定コストを「人件費」の一部として決算に反映させるべきか否かを巡って、コスト反映を推進する会計士業界や一部連邦議員らと、無コスト扱いの現状維持を主張するハイテク業界が対立している。 現状維持派の論点は、「SOは世界から優秀な人材を引きつける有効な手段。コスト計上義務づけはこれを使いにくくし、米ハイテク産業の国際競争力を落とす」(インテルのクレイグ・バレット最高経営責任者=CEO)という産業政策論が一点。もう一つが、「一種の割り当て増資であるSOは損益計算書が反映すべき営業上の行為でなく、バランスシートと株数計算で処理すべき資本取引である」(シスコシステムズのデニス・パウエル最高財務責任者=CFO)という会計論である。 だが、米会計基準を決めるFASB(米財務会計基準審議会)は既にコストの損益計算書への計上義務づけの基本方針を決定。事態はハイテク業界の思いとは逆に進んでいる。さらにハイテク業界の中にも現状維持派を離脱する例が出てきた。マイクロソフトが七月に突然、SOを全廃すると宣言。同社のスティーブ・バルマー社長兼CEOが、「大企業として成熟しつつあるハイテク企業は右肩上がりの株価の終焉という共通の問題を抱えているはず。大企業ではストックオプションが人材保持の効能を発揮しにくい」と公然と指摘し始めた。

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