梯子をはずされた産業再生機構

執筆者:末羅征幸2003年12月号

銀行は自前で再生ファンドを立ち上げ、所管官庁の経産省はソッポを向き、金融行政の後押しもなく……。「ゾンビ企業の延命に過ぎないとする見方がありますが」。二百人近いマスコミ関係者で埋め尽くされた会見場から、全国紙の記者が恐る恐るそんな質問を投げかけると、ひな壇の左端に座っていた産業再生機構の冨山和彦・最高執行責任者(COO)は片方の頬をピクピク痙攣させながら、こう吐き捨てた。「素人的でナンセンスな議論ですね」。 八月二十八日夜、東京・永田町のプルデンシャルタワー七階。再生機構がダイア建設など支援企業の第一陣を発表した会見では、冒頭のような批判的な質問が出る度に、冨山COOが、「企業再生の可否は営業収益の問題です」「私はこの道で二十年飯を食っているプロだ」と言い返す刺々しさが目立った。斉藤惇社長も「世界最大の債権国なのだから自国で企業再生できる」と強気一本やりだ。 傲慢なのか、焦りなのか。幹部たちの余裕のない受け答えから二カ月半――本誌八月号で予想した通り、いや、予想以上に、再生機構が苦戦している。支援企業数は二〇〇五年三月末までに百件に上るはずだったのに、五月の営業開始からいまだ八件。支援企業の平均売り上げも六百億円と小粒で、ダイエーの福岡事業、日産ディーゼルなどの「大物」には逃げられてしまった。九州産業交通、うすい百貨店などでは取引金融機関が債権売却に難色を示しており、買い取り交渉に時間がかかっている。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。