検証・マハティール首相の時代

執筆者:サリル・トリパシー2003年12月号

マハティール首相が引退した。世間は二十二年間の功績を称えるが、その国家運営手法を精査熟察すると数々の矛盾も浮かび上がる。 ワシントン・アーヴィングの小説『スケッチブック』の主人公、リップ・ヴァン・ウィンクルがもし今、マレーシア中南部のキャメロン高原で二十年の眠りから覚めたとしたら、自分がどこにいるのか見当もつかないに違いない。国土を南北に走る高速道路には国産自動車プロトンが走り、プランテーションがあった場所はゴルフコースに変わり、ペナンが電子機器の一大生産拠点となっているのだから。そして、一九七〇年代後半には天然ゴムやスズ、ヤシ油の輸出くらいしか収入源のなかった国に、今では世界一、二の高層ビルがそびえ立っている。 十月末、マレーシア首相を辞したマハティール・モハマドは、首相在任中の二十二年間の自らの業績を振り返って満足していることだろう。たしかに国連の人間開発指数を見ても、マレーシアの発展は明らかだ。経済の「成績表」をちらつかせれば、彼を批判する者やライバルはぐうの音も出ないことだろう。何といっても、インドネシアのスハルト、ハビビ、ワヒド、あるいはフィリピンのエストラダやタイのチャワリット、チュアンといった大統領や首相たちがその座を追われたのと違い、マハティールは自ら選択して退任するのだ。

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