[パリ発]仏国民議会(下院)はその時々の政策課題についてインターネットの討論コーナーを設けている。そこで十月以降、最も議論が闘わされている話題は、イラク問題でも欧州統合でもなく「学校での宗教的象徴」。中学、高校でイスラム教女生徒が着用しようとするスカーフやベールを認めるかどうかが焦点だ。「髪の毛を隠すのはイスラム教徒の権利。フランスが自由の国なら着用を認めるべきだ」「キリスト教徒も学校では十字架を身につけない。イスラム教徒だけなぜ我慢できないのか」 新聞の寄稿欄も連日この論争で埋まっているが、騒ぎ自体は、決して目新しい話ではない。パリ北方クレイユの公立中学で、教師の指導に従わず、スカーフを着用した女生徒が教室から排除されたのが八九年。以後もトラブルは断続的に起きていた。 それが今年に入り、女生徒自らがメディアに登場するケースが相次いだため、一気に政治問題化。学校側の対応を巡って「信教の自由」か「布教活動」かで議論が沸騰した。この十月、パリ郊外オーベルビリエの公立高校でスカーフを取ろうとしなかったリラ(一八)、アルマ(一六)の姉妹が退校処分になると、家族の元にマスコミが殺到。その後もスカーフをかぶったまま幼稚園に息子を迎えにきた母親が追い出されたり、パリ市役所のソーシャルワーカーがスカーフ姿で面接業務に就いていることが判明したりと、騒ぎは拡大傾向だ。

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