朝鮮半島「有事」への備えを固める中国

執筆者:藤田洋毅2003年12月号

中国は北朝鮮問題の平和解決に甘い期待を抱いていない。この夏、国内朝鮮族に対して、あるアンケートを行なったのも、いざという時に備えるためだ。「ここまで深刻に受け止めているのか、と驚きました。指導部の危機感が、ひしひしと伝わってきましたよ」――ある中国共産党幹部が漏らした。中国東北部に在住する朝鮮族の地方幹部だ。「夏頃に受けたアンケート調査の質問が、尋常ではなかった」からだ。調査官は「万が一、北朝鮮と米国が衝突したら……」「万が一、中国と北朝鮮が衝突したら……」との仮説を投げかけ、「その時あなたはどうするか」と問いかけたという。六カ国協議をお膳立てするなど中国は北朝鮮の核問題の平和解決に向け、全力をあげている。同時に水面下では、「万が一」に備え始めたようだ。 社会科学院が表に立ったとされる調査だが、規模などの詳細は不明だ。この幹部は「知りうる範囲では、党・政府や学術、マスコミ関係など社会的発言力と影響力を持つ一部の朝鮮族幹部に対し、個別に民意調査しているようです。周囲にも調査を受けたらしい友人はいます。でも、話題にしません」という。内容もさることながら、調査は有無を言わせない雰囲気だった。調査を受けた人々は元締めは党中央と直感し、表だって口にすることをはばかっている。

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