さる十月十四日、マグナムフォト所属の米国人写真家エリオット・アーウィット氏(七五)が四年ぶりに来日した。四十年以上にわたって日本を訪れてきた同氏に日本への思いを聞いた。「来日は十五回目ぐらいでしょうか。なんべん来たかなんて思い出せません。パスポートを見ればわかるだろうけど、昔のものはどこにしまったか覚えていないし」 そんなアーウィット氏が受ける日本の印象は、回を重ねるごとに大きく変わってきているという。「初めて日本を訪れたときのことです。東京の下町にある古い旅館に泊まりました。いきなり玄関先で水をまかれたり、着物を着た女性に手をついて挨拶されたことに驚いたものでした。当時は日本に関する情報も今に比べ格段に少なかったし、これ以上ないほど古風なところが僕には新鮮な魅力でした。でも古い日本の伝統が随分前から薄れてはいると思います。若者の髪の色もすっかり変わったし(笑)。でも変化は急に起きたのではないはずです。 二十年前に来日したときのことでした。まだ若かった僕は富士山に登ったのですが、霊峰と崇めている山なのに登山道がゴミだらけで驚きました。もちろん、土地の人が大事だと言っている場所がひどくカジュアルになっていることはよくあることです。それでも当時、富士山頂で祈る登山客の姿は、それは神秘的に見えました」

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