四月一日から、消費税をめぐる制度が変わる。まず、課税免除や簡易課税の適用上限(課税売上高)が引き下げられる。主な対象は消費税を国に直接納める業者などで、納税に際して適用されるのは二〇〇五年以降。いずれも悪名高き「益税」の縮小につながるため、方向としては改正と言える。 一方、消費税額を本体価格にプラスした内税価格での表示(総額表示)義務付けとなると、話は違ってくる。価格表示やレジ、売上管理システムなどの変更や調整を余儀なくされる業者などへの影響が取り沙汰されがちだが、消費税を負担する幅広い層にも、この変更の持つ意味は大きい。 経済学的には内税表示と外税表示の選択を売り手の選択に任せるのが効率がいい。にもかかわらず内税表示の方を義務化するのは、端的に言って、今後の消費税率引き上げを前提とする政府が消費者の担税感を誤魔化すためだろう。 財政再建を考えれば、消費税は有力かつ重要な税目であり、徴税コストまで勘案すると、消費税率引き上げは税収増の有力な選択肢に違いない。が、内税表示で消費税の存在を忘れさせようという財務省の了見は姑息かつ逆効果だ。 サラリーマンの源泉徴収は日本の納税者意識を低レベルに留め置いてきた。消費税の内税表示義務化はこれと同様の欺瞞をいまさら繰り返す愚だ。まず取り組むべき財政支出の削減よりも先に、消費税率引き上げのお膳立てを整えるのも順序が逆ではないか。

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