本当の「イラク世論」の読み方

執筆者:池内恵2004年1月号

テロや米軍との衝突ばかりに目を奪われてはいけない。最新の世論調査から、アメリカやイラクの将来についてイラク人の本音を探った。 十二月十三日、フセイン元大統領が拘束された。フセイン政権残党勢力には大打撃である。しかしかえってイスラーム原理主義勢力の活動を刺激し、民族的屈辱の感情を呼び覚ます可能性もある。イラク情勢の急速な回復は望めない。 やはり、イラク人がアメリカに対して、またイラクの将来に対して抱いている感情の実態を把握して、イラクへの適切な対処策を案出していく必要がある。この点で参考になるのが、各種公表されているイラク人への世論調査である。本稿では、そのうち米ギャラップ社(Gallup)、米ゾグビー社(Zogby International)、英ユー・ガブ社(YouGOV)の調査結果を検討してみたい。 まず気になるのが、イラク人はこの戦争をどのようにとらえたのか、という問題である。大量破壊兵器の開発・隠匿の証拠が発見されないことから「イラク戦争に大義はあったのか」と日本や欧米では論じられるが、実は肝心のイラク人の立場ではあまり問題にされていない。イラク人の多くは「フセイン政権打倒」という結果にこそこの戦争の「大義」を認めているとみていい。ユー・ガブ社の調査では「米英のフセイン政権に対する戦争は正しかったか」という問いに、五〇%が正しかったと答え、二七%が正しくなかったと答えている。

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