「東芝ショック」に潜む危機

執筆者:杜耕次2004年1月号

業界に先立って「選択と集中」を打ち出した東芝の低迷が続いている。いち早く改革に着手しながら浮上できぬ理由とは。 二〇〇三年四月末の「ソニーショック」は投資家やアナリストだけでなく、一般のビジネスマンたちの記憶にも深く刻み込まれたが、その三カ月後と半年後の二度にわたって生じた「東芝ショック」はさほどでもない。「ショック」はいずれも株価の急落を表現したもので、決算発表が引き金になった点も共通する。ただ、前者のソニーショックが他の東証主力株にも波及して日経平均の二十年ぶりの七千七百円割れを陰で演出したのに比べ、後者のマーケット全般への影響は限定的。もちろん世界ブランドのソニーと「国際ブランド」にとどまる東芝の落差もある。目立たぬゆえに見逃されがちなのだが、実は東芝ショックの裏に潜む危機は相当に深刻だ。 最初に東芝の株価に打撃を与えたのは、七月三十日に発表した〇三年第1四半期(四―六月)決算。連結営業赤字の規模が前年同期の二百六十三億円から四百十三億円へと拡大した結果、同日の株価は前日終値の五〇二円から四六〇円に下落。さらに八月に入ると三〇〇円台にまで落ち込んだ。 その後、東証市場全体に外国人投資家の大量の買いが入り、日経平均が一万円の大台を回復すると、他の大手電機株につられて東芝の株価もじりじり回復。九月初めにようやく五〇〇円台に戻したが、十月二十四日の九月中間決算発表で連結営業損益が前年同期の二十九億円の黒字から百二十億円の赤字に転落したことが明らかになると再び値崩れが始まった。十二月十一日現在三八四円と上値が重い展開だ。

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