イラク戦争反対で結束した独仏の急接近が、対米関係だけでなく欧州連合(EU)の欧州委員会との関係も揺さぶっている。 十一月二十七日、EUの十四年ごしの懸案だった、国境を越えた企業買収に関する法案が閣僚理事会で採択された。しかし、株主の事前承認なしに経営者が買収阻止に動くことを規制するなど、企業買収を円滑にする条項はドイツなどの手によって骨抜きにされた。ドイツは自国企業保護の意識が強く、外国企業の買収標的にされやすくなることを懸念した結果だ。 これに収まらないのが欧州委のボルケスタイン委員(域内市場担当)。「こんなことを繰り返していたら、二〇一〇年までに世界最強の競争力を持つというEUの目標など達成できるわけがない」と怒りを隠さない。実際、「法案は政治的取引の犠牲になった」と同委員に非難されても仕方ない動きもあった。自国への支持取り付けのためドイツは、フランスにはEUの農業予算問題、英国には労働者保護に関するEUの規制案と、それぞれ両国が抵抗している分野での協力を約束したとされる。全く異なる分野で大国が手を握り、重要な政策決定を左右するのは、市場自由化の旗振り役である欧州委には我慢できない事態だ。

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