三菱東京と野村の「気になる急接近」

執筆者:川原吉史2004年2月号

 金融界でささやかれる再編観測がある。三菱東京フィナンシャル・グループ(FG)と野村ホールディングス(HD)が、経営統合に向けて動くのではないかというのだ。 これまで両グループの中核である東京三菱銀行と野村証券は「互いに最も疎遠な金融機関だった」(野村関係者)。バブル期に八十九回国債を巡って壮烈な「仕手戦」を演じた両者は、金融制度改革でも激しく火花を散らしてきたいわば宿敵同士。ただしここ数年、両グループが静かに接近しているのは事実である。 野村は一九九九年末、東京三菱からはじめて長期の借り入れを実施している。金額はみずほコーポレート銀行と並ぶ五百億円で、ある野村関係者は「時間をかけて他の金融機関の残高を調整して実現した」と振り返る。 東京三菱の方も、二〇〇一年十一月に保有株四千億円を拠出して初の上場投資信託(ETF)を組成した時にパートナーとして選んだのは、それまでほとんどビジネス上の付き合いがなかった野村だった。その後のETFの組成はすべて野村が引き受けている。 大手銀行が相次いで大規模増資に走った二〇〇三年三月、三菱東京FGが実施した三千億円の公募・売り出しでは、米モルガン・スタンレーに内定していた主幹事に、野村証券が共同主幹事として割り込む形になった。

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