それにしても稚拙な参拝

執筆者:2004年2月号

 小泉純一郎首相が元日、靖国神社を参拝した。「意表を突く」ことに無上の喜びを感じ、それを内閣支持率維持の唯一の手段としてきた首相は、内閣記者会の大半の記者たちが正月のつかの間の休みを取っている新聞休刊日前日に、突如、紋つき袴で靖国神社へ現れた。 首相の靖国参拝そのものの是非については国論が二分しているのであえて触れないが、どうしても言っておかなければならないのは、まるで猫が店先から魚を盗み取るように参拝して、一体、だれが満足するというのか。姑息なやり方に対して参拝賛成論者からも批判が出ている。どうしても参拝すると言うのなら、なぜ、事前に日時を明らかにして正々堂々と参拝しないのか。そしてもちろん、それによって起こる中国や韓国などとの外交上の軋轢は、首相自らの責任で鎮静化しなければならない。 参拝の理由について首相は「初詣で」と述べた。「日本の伝統」とも述べた。初詣でならなぜ、参拝の一時間前にマスコミ各社に連絡してから出掛けるのか。明らかに参拝するシーンを映像や写真で報じてほしいという意図が込められているのだ。 蠅子としては中国や韓国が反発するから参拝すべきでない、などと単純なことを言うつもりはない。「初詣で」というような子供だましの理屈を述べたりしないで、国民になぜ参拝するのかを論理的にきちんと説明する必要があるということだ。

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