「メディア支配」という魔力

執筆者:岩田登2004年2月号

世界のメディア業界の再編が加速している。技術革新や株価バブルの終焉が背景にあるが、仕掛けているのは野望に満ちたオーナーたち。いずれ劣らぬ個性的な、現代のメディア・タイクーンの群像を報告する。 二〇〇三年、失意と得意の絶頂の両方を経験したメディアのタイクーンがいる。エドガー・ブロンフマン・ジュニア(四八)だ。「シーバスリーガル」で知られる世界有数の酒・飲料会社シーグラム創業家の三代目。家の財産をメディア事業に次から次へと注ぎ込み、ついに家業を手放した。「二十億ドルの浪費」(ロサンゼルス・タイムズ紙)は道楽と呼ぶには大きすぎるが、それでもメディア支配の野望は衰えていない。 ブロンフマンは昨年、仏メディア大手ビベンディ・ユニバーサルの娯楽部門の買収合戦に参加したものの、NBCに敗北。一息つく間もなく、再建途上にあるタイムワーナーの音楽部門の買収に名乗りを上げ、二十六億ドルで買収を決めた。「音楽産業が永遠に低迷することはない。この産業はコンテンツを供給する新しい方法をいつも見つけ出すのだ」。約十年間にわたってメディア業界の大きな浮沈を経験した人間にしては楽観的すぎる台詞だが、それが「めげない男」の持ち味なのだろう。

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