QDII導入を待ち望む香港市場

執筆者:2004年2月号

 好調が目立った昨年のアジア株式市場の中でも、最もパフォーマンスが良かったのは香港株式市場に上場する中国本土企業株(H株)だ。H株の株価指数は昨年一年間で二・五倍に急騰した。同じ中国株でも上海上場のA株指数は十一月に四年半ぶりの安値を更新、明暗が際立つ。 H株上昇の要因の一つは、「国内投資家の海外株式への投資が解禁される」という思惑が強まったことにある。特に、ここ数年、資本市場改革のメニューとして浮かんでは消えてきたQDII(適格国内機関投資家制度)の導入が、今度こそ実現するとの期待が膨らんだ。 QDIIは、昨年七月から運用が始まったQFII(適格外国機関投資家制度)の逆の制度。社会保障基金や保険会社など中国国内の機関投資家に、海外の株式などへの投資を限定的に解禁する仕組みだ。中国政府が新型肺炎(SARS)で打撃を受けた香港経済をてこ入れする上で、QDIIは有力な道具にもなる。中国の投資家が海外株を買えるようになれば、一番身近な“海外”で、しかも国内市場より割安に評価されているH株が恩恵を受けるのは間違いないからだ。 折からの人民元切り上げ期待で、中国には海外からホットマネーが流れ込み外貨準備高が急増、将来のインフレ懸念が芽生えた。切り上げ圧力を緩和するには流入する外貨の出口を整備するのが近道であり、QDIIはそれにぴったりという見方もされた。

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