資本市場で自己主張を始めた「欧州」

執筆者:田村洋祐2004年3月号

EUが国際会計基準を採用するウラには、米国に対する剥き出しの対抗心が見て取れる。「ドメスティック化する欧州」と、どう付き合うか。[ロンドン発]日本の資本市場関係者の間で、「欧州」の存在感が増している。ひたすら「米国」の動向を追いかけてきた金融機関や事業会社が、欧州市場についてにわか勉強をし始める様子は、日本の資本市場政策がバブル崩壊後十余年を経てもなお、戦略性を欠いたキャッチアップの域を出ていないことを示しているだろう。 東京証券取引所や金融庁、経済産業省の担当者が年明けから相次いで、英金融サービス機構(FSA)や欧州連合(EU)の本部を訪れている。「二〇〇五年以降も日本の会計基準を欧州で使えるようにして欲しい」。陳情の内容は、この一点に絞られる。 EU域内の上場企業は二〇〇五年から一斉に国際会計基準を使い始める。これまで日本の資本市場関係者は、国際会計基準を欧州企業の問題と捉えてきた。しかし、それが本当は広く欧州市場の制度変更そのものを意味することに、最近ようやく気づき始めたのだ。 EUは策定中の「透明性義務指令」で、EU域内の市場で株式や債券を発行・上場する企業に、原則としてすべて国際会計基準の採用を求めている。

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