再び巨大化する米銀

執筆者:青木勝2004年3月号

アメリカ金融界に規模の頭抜けた「ビッグ3」が誕生した。「個人向け業務」をテーマにした次の大型再編の主役はどこに――[ニューヨーク発]米国の金融機関が巨大化の道を再び歩み始めた。昨秋以降、最大手クラスの二件の大型M&A(合併・買収)案件が矢継ぎ早にまとまっている。景気回復や株価上昇を受けてM&Aの環境が好転している中で、新たな金融再編ブームの引き金となる可能性が濃厚だ。 米金融界にとって久々の大型再編となったのが、昨年十月二十七日に発表された米銀行持ち株会社三位のバンク・オブ・アメリカによる七位のフリートボストン・フィナンシャルの買収。年明け後の一月十四日には、二位のJPモルガン・チェースが六位のバンク・ワンの買収を発表した。新JPモルガン・チェースの総資産(昨年十二月末現在一兆九百七十五億ドル)は業界首位のシティグループ(同一兆二千六百四十億ドル)に迫り、新バンク・オブ・アメリカ(同九千三百六十七億ドル)を加えた「ビッグ3」と、ワコビア(同四千九億ドル)、ウェルズ・ファーゴ(同三千八百七十八億ドル)など四位以下の金融機関との規模の格差は一段と広がる。 米国では銀行破綻が続出した一九八〇年代後半から金融再編が進んだが、九〇年代半ば以降は営業地域や業務範囲を拡大するための大型M&Aが相次いだ。九四年に州を超えた店舗展開規制が撤廃され、九七年からは銀行による中堅証券の買収が可能になったのに続き、九九年十一月には銀行、証券、保険の相互参入を認める金融制度改革法が成立するなど一連の規制緩和がこうした動きを促した。さらに株式市場での銀行株高騰も、株式交換方式による大型買収を可能にした。

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