二月六日のモスクワ地下鉄爆破テロ事件で、ロシアからの分離独立を目指すチェチェン共和国独立派内部に路線対立が起きているとの観測が強まっている。 プーチン大統領は事件直後、「マスハドフ(元チェチェン大統領)一派の犯行だ」と決めつけたが、武装勢力内では穏健派であるマスハドフ派は関与を否定し、ロシア政府との交渉を呼びかけた。地下鉄テロを実行したのは、強硬派のバサエフ野戦司令官の一派とする見方が有力だ。 バサエフ派は二〇〇二年のモスクワの劇場占拠など一連の無差別テロを仕掛けてきたが、マスハドフ派はこれに批判的だという。米連邦捜査局(FBI)もバサエフ司令官を監視リストに加えたが、マスハドフ氏は加えていない。 一方、バサエフ派のテロ準備基地がモスクワ郊外に数カ所あることは、逮捕されたチェチェン人女性の証言として二月初めにイズベスチヤ紙でも報じられた。ところが、ロシアの連邦保安局(FSB)はこの拠点を割り出せていなかったことが今回の地下鉄テロで判明。在モスクワの外交団の間ではFSBの捜査能力が疑問視されている。

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