――昨年は、タンク爆発や工場火災など大企業の製造現場で重大な事故が相次ぐ一方、H-2Aロケットの打ち上げ失敗や環境観測技術衛星「みどり二号」の故障など科学分野でも技術の信任性が問われる事故が相次ぎました。畑村 確かに看過できない事故ばかりだが、製造現場の事故とロケット・衛星関連の事故は、失敗としては同列に扱うべきではないと考えている。一口に言えば、製造現場の事故は「許されない失敗」であり、ロケット・衛星関連の事故は「許すべき失敗」であると思う。 新日鉄名古屋製鉄所でのガスタンク爆発や北海道苫小牧の出光興産ナフサ貯蔵タンク火災などは、事故の引き金はリストラや設備の老朽化であったかもしれないが、その根底には、製造現場を蝕んでいる「見ない・歩かない・考えない」があることを忘れてはならない。やるべき事をやっていない失敗なのだ。 一方、ロケットや衛星の事故は、手抜きをしたりしたのではなく、できる事をやったうえでの失敗だ。新領域に挑戦した結果として出てきた失敗と言える。宇宙開発は、誰にも教えを請えない領域であり、失敗を重ねながら自前で知見を増やしていかなければならない。宇宙開発では、アメリカは日本とは桁違いの知見を備えているが、だからといって決して教えてくれたりはしないのだ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。