失敗の芽を摘む企業ガバナンスとは――本誌編集部 昨年十二月十五日、三菱重工業は製造現場改革策を発表した。長崎造船所の大型客船火災、愛知県小牧南工場の戦闘機ケーブル切断など、二〇〇二年に相次いだ事件、事故を教訓として再発防止に向けたものだ。この現場改革策は、〇二年十二月に設置された「現場管理改革委員会」によって検討されてきた。委員会の取り組みを説明する資料に印象に残る次のような一節がある。 同様の問題が発生しないようにするため、事件・事故の背景にある工作部門の「根底」の問題点について議論し対策を検討――。単に問題点とせず「根底」の問題点としたところが、これまで不祥事を起こした企業が発表する再発防止策とは実は異なる。 たとえば雪印乳業の場合、二〇〇〇年の集団食中毒事件を受けて、社長直属の商品安全監査室、消費者の声を三百六十五日受け付けるCS推進室、第三者による経営諮問委員会の設置といった施策を打ち出した。問題にされたのは、当初原因とされた大阪工場の衛生管理、汚染された脱脂粉乳と知りながら出荷した北海道・大樹工場の運営、事件発生後の製品回収の遅れ……挙げればきりがない。だが、経営刷新後に発表した前記の再発防止策への批判は、ほとんどなかったはずだ。商品の安全管理の仕組み、異常があった場合の即応体制の整備、第三者を介した経営の透明化。いずれも間違ってはいない。ただ対症療法とみえてしまう。

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