電力需要の急伸で鉄道輸送がパンク状態

執筆者:遊川和郎2004年3月号

 景気の過熱が懸念されている中国だが、電力需給の逼迫が石炭需要、そして鉄道輸送量の増大をもたらしている。昨年来、鉄道貨物の需要は一日当たり貨車二十万台に達する一方、現実には九・五万台程度と需要の半分も満たしていない。電力生産は石炭輸送量次第というボトルネックが生じている。 石炭資源は山西、陝西、内蒙古などの内陸中西部に偏在し、需要は沿海地域に集中することから鉄道輸送への負荷は大きい。北京―上海、北京―武昌―広州、北京―南昌―深セン、北京―ハルピン、蘭州―西安―連雲港といった主要幹線に加え、大同―秦皇島、石家荘―太原、北京―太原など主な石炭輸送ルートは軒並みパンク状態で、繁忙路線を避けるための迂回輸送も常態化している。旧正月前後や大型連休には旅客輸送の圧力も加わり、鉄道輸送能力の整備は喫緊の課題となった。 中国の鉄道は一部を除き、旅客と貨物が同一線を走行しているため、旅客列車の平均営業速度は時速六十二キロ、貨物では同三十二キロに過ぎない。鉄道の輸送効率を上げるには、新線建設による鉄道網の拡充に加え、主要幹線の電化・複線化、運行システム改良など在来線の高速化が欠かせない。さらに、東部は旅客専用線の建設や港湾との連絡強化、中部は石炭輸送線の強化、西部は将来的な路線網や資源輸送線の建設といった地域別の重点対策も考えられている。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。