有能な女性官僚が外務省を去る。在ジュネーヴ国際機関政府代表部の松田弥生一等書記官(一九八七年入省)。皇太子妃と同期入省だ。 松田氏が脚光を浴びたのは九六年、当時の橋本龍太郎首相の英語通訳に抜擢されたときだ。サミットなどのニュースで、地味な服装で長い髪をひっつめた姿を記憶する向きもあるだろう。その後、本省で日米安保ガイドラインの改定やインドネシアなど東南アジア主要国の担当を経て、ジュネーヴで世界貿易機関(WTO)の通商紛争を一手に引き受けていた。 省内には「仕事ができすぎて部下に厳しく、管理職に向かない」との評もあったが、外務省も外務省。いまや閣僚でもない橋本氏が欧州などに出向くたび通訳は必ず松田氏で、WTOの本務そっちのけで南アフリカまで飛んだかと思えば、英語通訳なら大勢いるロンドンへもお供させられ、「休日出勤もしょっちゅうの超多忙」(同僚)だった。ムネオ問題の教訓もどこへやらで、外務省は見切りをつけられて当然だろう。 松田氏は四月から司法修習生に転じる。米国の弁護士資格も持ち、目指すのは企業専門の弁護士だという。

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