民主主義の源流地ギリシャに根付く寛容

執筆者:浅井信雄2004年4月号

 米議会内外でうごめく最強のロビー集団はユダヤ系であるが、次いではギリシャ系だといわれる。これらの国や民族が米国の力に頼るのは、その国や民族が単独では力不足だからだ。 オリンピック発祥の地ギリシャには民主主義思想の源流があり、言語、神話、建築、彫刻など広い分野でも世界的影響を与えてきた。ただしそこでの存在感は主として「古代ギリシャ」である。 それに比べ「今のギリシャ」は単独で世界を動かす力に欠ける。「古いギリシャ人の栄光に照らして今日のギリシャ人は光が弱い」との指摘も絶えない。古代ギリシャ人と今日のギリシャ人は違う人間なのか、共通点はあるのか。 米中央情報局(CIA)の二〇〇三年七月の推定によれば、ギリシャの総人口は一〇六六万五九八九人、民族的内訳はギリシャ系九八%、その他二%、宗教的にはギリシャ正教九八%、イスラム教一・三%、その他〇・七%である。 特に付記されているギリシャ政府の主張「ギリシャには民族的分裂は存在しない」が目につく。ギリシャ民族とギリシャ正教の人口がともに九八%、公用語のギリシャ語人口が九九%であるから、確かに同質性が高いといえる。 古代ギリシャ民族のルーツは北部マケドニア地方との説が有力である。ヘレニズム文明の基礎を築いたアレクサンドロス大王もマケドニア国王であり、十二のギリシャ神話の神もマケドニアで生まれたと解釈されている。

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