天命を知るまで

執筆者:成毛眞2004年4月号

 会社を設立して、そろそろ四年が経とうとしている。二〇〇〇年をピークにITバブルがはじけ、経済全体もデフレ不況から抜け出すだろうと読み、製造業や流通業などの古参企業を応援する仕事を目指した。 時代の最先端であったIT企業の経営ノウハウを古い体質の企業に適用してもらうことで、体質改善による業績向上が可能だと考えたのだ。対象となる企業の株式を事前に取得しておけば、コンサルティングの結果に対して責任を持つこともできるし、収益も見込めると期待した。 これはプライベート・エクイティの一種なのだが、当時の日本はその言葉になじみがなく、「自己責任型コンサルティング・ファーム」と呼んでみたりした。ところが最近では企業再生ファンドが大はやり。国の内外の金融機関が殺到している。しまいには日本国まで産業再生機構などというビジネスをはじめてしまった。 カネボウの再建問題では、カネボウ自身が選んだとはいえ民間のユニゾン・キャピタルや花王の提案をはねのけ再生機構が登場してしまう。わが社はこのような大型案件は手がけていないので不満はないが、いったん国営金融機関が登場すると民間に勝ち目はない。 勝ち目がないのは国相手の訴訟も同様。外資系IT企業に勤めていた同僚の何人かが、ストックオプション課税問題で訴えていたが、一時所得より税率の高い給与所得であるとする原告敗訴の判決が続いている。僕自身は学生のころ、星新一の『人民は弱し 官吏は強し』という本を読んでいたので、国相手のトラブルは尋常一様ではないと学習していた。おかげで、すなおに給与所得で申告していたため、訴訟費用まで巻き上げられることはなかった。もともと国相手の戦いをするには事象が小さいし、世論も喚起できずに負ける確率が高すぎる。

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