アメリカが描く「原発版NPT構想」の盲点

執筆者:五十嵐卓2004年4月号

ブッシュ政権の新提案は世界のエネルギー体制をゆがめかねない。核の拡散防止が大きな課題となる中でこそ見落せない論点は――。 ブッシュ米大統領が二月十一日に発表した、核拡散防止をうたった七項目の原子力利用に関する新提案が世界に波紋を広げている。提案は原子力発電用の核燃料生産を既存の原子力利用国に限定し、ウラン濃縮や使用済み核燃料再処理などに関する技術を新たな原子力導入国には供与しないことが柱。原子力発電版の核拡散防止条約(NPT)といえる内容で、原発の新規導入を構想する新興工業国にはエネルギー政策の大きな制約要因になる。米国は今なぜ、核兵器の拡散にとどまらず原子力平和利用へも管理強化の手を伸ばそうとするのか――。浮き彫りになるのはエネルギー分野においても自国利益を優先し、単独行動主義に走る米国の姿だ。損なわれる原子力の「利点」 まず、世界の原子力平和利用の現状を確認しておこう。現在、世界で原子力発電所を運転中の国は三十一カ国・地域あり、建設中または建設を計画中の国がイラン、カザフスタンなど五カ国ある。これ以外に原発建設の構想を何らかの形で表明したことのある国はインドネシア、タイ、ベトナム、トルコなど十カ国程度にのぼるとみられる。世界最大の原発大国は言うまでもなく米国であり、百三基の原発が稼働、一億二百万キロワットの発電能力を持っている。二位はフランスで五十九基、六千六百万キロワット、日本はフランスに次ぐ第三位で五十三基、四千六百万キロワットの発電能力がある。

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