「会長兼CEO」を戴く日本企業のリスクと転機

執筆者:喜文康隆2004年5月号

「バーリとミーンズの定義する『支配』とは、……取締役会を法律的あるいは実質的に選出する権限のことであって、企業活動を実際に指揮し監督することではない」(間宮陽介『法人企業と現代資本主義』)     * 米国の企業の間で、会長とCEO(最高経営責任者)を分離する動きが広がっている。三月二十九日付の日本経済新聞朝刊に、出色のレポートが載っている。 新しい流れの象徴として注目を集めているのが、ウォルト・ディズニーをめぐる取締役会と株主のあいだのぎくしゃくした関係である。今年の三月の株主総会で、マイケル・アイズナー会長兼CEOに対して、かつては盟友関係にあったロイ・ディズニー前副会長や機関投資家の反対で、不信任票が四三%に達した。取締役会は急遽、アイズナーが、会長職を退任し、CEOに専念することを決めた。しかし、多角化の失敗や株価低迷を契機に火がついたアイズナー批判がおさまる気配はない。 ハイテク分野でもカリスマ創業経営者が、自ら会長とCEOの兼務を放棄している。デルの創業者マイケル・デルがCEOを退き会長専任になり、オラクル創業者のラリー・エリソンは逆にCEO専任になり、会長は現職CFO(最高財務責任者)に譲った。

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