企業会計基準をめぐる米欧の対立に気をとられているうちに、中国が「アジア代表」の顔をし始めた。日本が本当にやるべきことは何か。 資本主義のアジア代表は日本だというのが日本の常識だが、アングロサクソン、つまり米英の基準からすれば中国が日本にとって代わる日が近いかもしれない。ドラマは、資本主義の要である企業会計の国際標準を決める国際会計基準理事会(IASB=本部ロンドン)を舞台に起きている。その理事会メンバーとして早晩中国が日本と肩を並べ、アジア代表に選ばれる情勢だという(二〇〇三年十二月二十六日付、日本経済新聞朝刊)。 日本が理事の座を失うことはないが、中国は、日本が拒んでいる国際会計基準の受け入れを表明している。おまけに日本は発言力に乏しい。はからずも、先の世界大戦前の「ABC(アメリカ、ブリテン、チャイナ)包囲網」の形成と国際的に孤立する日本の構図を思い起こさせる。 国際会計基準は、銀行会計の国際標準である国際決済銀行(BIS)基準の成立のあと、一九九〇年代初めに米英主導で議論が始まった。独仏主導の欧州連合(EU)も欧州市場活性化のために積極的になり、EUは二〇〇五年一月から上場企業約七千社に適用する方針だ。アメリカは自国の企業会計基準自体が事実上の国際標準だという背景から、EUの意向を取り入れたIASB基準に切り替えるのではなく、二〇〇五年以降にアメリカ基準とIASB基準を統一することで欧州側と一致している。アメリカ基準は欧州でそのまま通用するので、アメリカ企業にとってIASBが障害になることはない。裏返すと、米英が基準の違う独仏主導の欧州を米英型に改造させようとしているのがIASB基準の持つ政治的意味である。

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