アメリカ「牛の町」建設構想

執筆者:ルイス・ジェイコブソン2004年5月号

より巨大に、よりハイテク化した農場がアメリカで計画されている。ゼロ・エミッションはもとより、発電すら「牛」でまかなうスーパー農場とは――[カリフォルニア発]ウィリアム・バック・ジョンズが計画中の「牛の町」構想を話すと、たいてい相手は笑い出す。なにせ、カリフォルニア州・モハーベ砂漠にある千九百エーカー(約二百三十三万坪=東京都中野区の面積の約半分に相当)の土地に、巨大ハイテク酪農団地を建設しようというのだ。 だが、ジョンズの計画は大まじめなもので、支援者たちは、これが成功すれば、環境にやさしい画期的な酪農団地になると語る。 エネルギー起業家のジョンズと、カリフォルニア州のクレーマージャンクションとバーストウの間に位置する広大な乾燥湖底を所有するヘンリー・オロスキーの二人が、この計画の発起人だ。オロスキーが所有する広々とした砂漠に、九万頭の乳牛を飼育する酪農団地を建設しようというのだ。 施設はハイテクを駆使して建築され、ここで搾乳が行なわれるだけでなく、牛の排泄物からメタンガスが収集される。普通の大規模酪農施設では、大量に排出される牛の糞尿やメタンガスは周辺の空気や水を汚染するただの臭い汚物でしかない。ところが、計画中のハイテク畜舎では、汚物はいちども地面に直接触れることはなく、回収されるメタンガスは発電に使われるのだ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。