中国の国内半導体産業保護策に対し、米国が官民一体で攻撃を始めた。 米政府は三月十八日、中国が通常一七%の付加価値税を国内企業製半導体製品に限り三―六%に軽減している点について、「外国企業差別」として初のWTO(世界貿易機関)提訴に踏み切った。 さらに、パソコンや携帯情報端末(PDA)の高速インターネット接続に使う無線LAN通信の規格でも軋轢が生じている。中国政府は事実上の世界標準となっている「Wi-Fi(ワイファイ)」と異なる独自規格、「WAPI」を六月一日から義務づける方針。これに対し米側は、インテルとブロードコムがWAPIに対応する半導体の開発・販売を拒否し、国務省や通商代表部も撤回を要求するなど対決姿勢を強めている。中国がこのまま独自規格を強制した場合、「こちらもWTO提訴になる」(米国半導体工業会)。 一見、単なる技術規格の話のように見えるが、WAPI問題は付加価値税問題以上に中国のハイテク育成戦略の本質を示している。世界標準規格に逆らっただけではなく、WAPIの技術仕様を公開せず、中国企業からライセンス取得するよう強制している点が注目される。 つまり、独自規格だけでは中国企業にとって短期間の先行者利益を得られる程度のメリットしかないが、その規格を中国企業の「専売特許」にしてしまえば、中国市場に参入したい外国企業は否が応でも技術を買い続けざるを得ないというわけだ。あらゆる標準技術を日米欧が開発してきたIT(情報技術)の世界で、いかに知的財産が生む経済的利益の日米欧独占に風穴を開けるか、考え抜いた結果の戦術に違いない。今後も他の分野に応用してくることが十分考えられる。

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