プーチンの後釜を狙う後継者たちの顔ぶれ

執筆者:名越健郎2004年5月号

[モスクワ発]「政権の後継者像を既に描いている。誠実で、国民に奉仕することを望み、能力的にそれが可能な人物だ」。三月十四日のロシア大統領選で七一%の得票で圧勝したプーチン大統領は、当確後の記者会見でこう明言し、二期で退陣する意向を示唆した。 ロシア憲法は大統領の三選を禁止しており、プーチン氏自身も「憲法は社会安定の基礎であり、改正の必要はない。改憲論議はやめるべきだ」(昨年十二月九日)などと再三、任期延長に反対している。「巡り合わせで大統領になったプーチン氏は巨大な重圧で疲れている。二期で余力を残して辞めるのが彼の本心だ」(リリヤ・シェフツォワ米カーネギー財団モスクワ支部主任研究員)といわれる。二〇〇八年の後継者問題が浮上するゆえんだ。 現時点で最有力とみなされているのは政権ナンバー2のセルゲイ・イワノフ国防相(五一)だ。サンクトペテルブルク出身で、レニングラード大学卒、国家保安委員会(KGB)勤務というプーチン大統領と同じ経歴。プーチン氏が連邦保安局(FSB)長官になると、副長官に就任した。側近中の側近で、大統領の重要決定には必ず関与するといわれる。 コメルサント紙は、来年の第二次大戦戦勝六十周年の式典準備責任者に任命されたことなどをとらえ、「後継者に向けた政治的訓練が始まった」と書いた。モスクワの外交団の間でも、「クラウンプリンス」(皇太子)と呼ばれ始めた。

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