規制緩和と不況の“相乗効果”で、企業数が激増している業界がある。「人材紹介業」すなわちヘッドハンターだ。「つい二年ほど前、都内で二千社強だと言っていましたが、昨年暮で九千社、いまでは一万社を超えているでしょう」 こう語るのは塚田淳夫氏(七〇)。日本のヘッドハンターの草分け的存在で、外資系企業をおもな対象として二十五年間に七百八十人もの幹部を紹介してきた伝説的人物だ。社長などトップだけでも百八十人に上るという。 現在、急増しているヘッドハンターは、しかし、塚田氏のような腕利きでも目利きでもない。外資系企業も、日曜日の全国紙に求人広告を出すことが多いが、翌日の月曜から数日間、人事部は仕事にならないという。「問い合わせの電話が殺到するからですが、それは求人への応募者からではなく、雨後の筍のように増えた、ヘッドハンティング会社からなのです」 かつて日本コカ・コーラやネッスル日本(現ネスレ)で人事部長を務め、外資系企業に幅広い人脈をもつ塚田氏のもとには、「どうにかならないか」と嘆く声が頻繁に届く。一九九七年に法改正が行なわれ紹介業が自由化されたことと、不況によるリストラが、ヘッドハンターの増加を招いた。

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