佐川急便が得た強力な「後ろ盾」

執筆者:小村太朗2004年6月号

 消費市場としての期待が高まる中国で、物流ビジネスをめぐる日系企業の競争が激化し始めた。地歩を巧みに築いているのが佐川急便。同社は今年、輸出入に伴う決済を代行できる「輸出入貿易権」を同業他社に先駆けて取得した。七月をめどに北京、上海、広州など六都市で決済を含む一括輸送サービスを始める予定だ。また昨年七月には中国初となる、全土を対象とした企業物流の受託、貨物輸送、保税倉庫、通関、国際利用運送業などをカバーした総合物流企業としてのライセンスも手にしている。 中国の物流ビジネスへの参入では比較的後発組であるにもかかわらず、佐川が急速に存在感を高めている背景には、昨年七月に提携した人民解放軍系の有力グループ、保利集団(POLY)という強力な後ろ盾がある。総経理(社長)の賀平氏は故・トウ小平氏の娘婿で、やはり軍出身。保利は米ゼネラル・モーターズ(GM)など欧米の大手企業と提携しており、佐川は今後も保利との関係をテコにビジネス展開のスピードを上げる構えだ。 豊富な中国ビジネスのノウハウを生かした大手商社の活躍も目立つ。三菱商事は九〇年代半ばに輸送基盤作りに着手した。大物華僑財閥・ケリーグループとの合弁会社設立などを足がかりに、現在では自社でトラック輸送も手がけ二十三都市に三十二の拠点を持つ。こうした実績がモノを言い、物流ではこれまでほとんど付き合いのなかったキヤノンの中国内輸送も受注した。住友商事は昨年、江蘇省の関連物流会社が、一部都市で限定的に実施されている規制緩和の対象の包括的ライセンスを取得。伊藤忠商事も三月末、中国食品最大手で、全国七十一カ所に配送センターを持つ康師傳傘下の物流会社に出資を決めた。

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