奇妙なことに、北朝鮮の核兵器開発をめぐり、米朝の現状認識はぴったり一致している。「時は必ずしもわれわれの味方ではない」と四月に日本に続いて中国を訪問したチェイニー米副大統領は述べた。ブッシュ大統領もその後、一語違わぬ発言をした。 北朝鮮の金永南最高人民会議常任委員長と金桂冠外務次官はより具体的に「時はブッシュの味方ではない。時が経てば、核抑止力を質的、量的に強化する」と発言した。 米朝の首脳が指し示す事実はただ一つ。北朝鮮は核兵器保有数を着々と増やしている、ということなのだ。そんな懸念を裏付ける報道も続いている。ニューヨーク・タイムズ紙によると、パキスタン“原爆の父”A. Q. カーン博士は一九九九年北朝鮮を訪問した際、三個の核爆発装置を見せられた。 ワシントン・ポスト紙によると、米情報当局は北朝鮮の核兵器保有数推定をこれまでの「一、二個」から「八個以上」に上方修正する、というのだ。 転機は今年一月訪れた。一つは、北朝鮮の招きで米ロスアラモス国立研究所のジークフリート・ヘッカー元所長らが寧辺の核施設を訪問したこと。もう一つはカーン博士が北朝鮮との核開発協力を“告白”したことだ。 容器に入ったプルトニウムを見せられたヘッカー博士らは帰国後、その時着ていた服を提供した。プルトニウムを抽出する際にできる副産物アメリシウムなどを検出し、その半減期分析から、プルトニウムの抽出時期を探った。八千本の使用済み核燃料棒の再処理完了を確認したとみられている。

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